双めきと夜窓―囲世界燈試論

きみ寐貌ねがおしず

月なもくらき夜の底方そこい

爛焉らんえんたるくちばしついばまれ あかほのおの滲むらむ

猥雑なる小部屋に乱れ

慈雨降りく書や書の灰や

あわれなる傾眠のへ置かれ伏し

   ああ……

御盞みけにぞそそ

それなる紅泉

ひらくことき窓のより

眺め居りたるわたくし睡眼まなかい

くましき第二の相にきずを癒し兼ね

   漸兮ようよう

処世とは墓碣ぼけつ建立の一々と

え上る随眠の街路は淋しくちて居り

きみの眠りはあらたなる塋域けいいき仄然ほのぼのと欲し

り尽くす烏有なる我

うるわしき囲世界はもくらささめきを

   而今いま

うごくことだにき器世間へと発出す

暗鬱たるこころひと

くろうてなよりる嗜眠の夕

滴り落ちる雪片への腐爛

吾が弑殺の余響

    悔恨と

     懊悩と

      鬱悒と