2023-01-01から1年間の記事一覧

12月に読んだ本(2023年)

・吉行理恵:吉行理恵詩集(現代詩文庫).思潮社,1975.・panpanya:商店街のあゆみ(楽園コミックス).白泉社,2023.・西垣通:思考機械―太古と未来をつなぐ知(ちくま学芸文庫).筑摩書房,1995.・岩田慶治:自分からの自由―からだ・こころ・たまし…

短歌

窓と家(5首) 余わたくしの住まえる家に窓のなし串刺天使メタトロンの翅はねのしろ未だし 水晶を摹まねて造りし我が家をルドゥーさえも无みせるものかは 窓こそは家のかたちと我が惟もえて窓のみの家を雲の最さ央なかに 単子論うとうと読みて午ひる遲さがり…

短歌

黒鳥のわがもとへ来て罵れる声ごえの濁だみ機械さびめく あわあわと水鳥なける闇黒淵やみわだの水みの面もにうつる余われ消えななむ 罔両うすかげの濃こまやかなりぬ街の燈ひのわが背そびらより来て逝ゆける逐おう やわらかき墓羣はかむら竝ならぶ斎ゆ庭にわ…

11月に読んだ本(2023年)

・長谷川龍生:長谷川龍生詩集(現代詩文庫).思潮社,1969.・長谷川龍生:続・長谷川龍生詩集(現代詩文庫).思潮社,1996.・佐佐木幸綱:作歌の現場―若い人のための実作入門書(角川選書).角川書店,1988.・大岡信、岡野弘彦、丸谷才一:歌仙の愉し…

短歌

朽葉(6首) くれないの世界ぞ悲あわれ我が貌を伴つれて没しずめる街の底にも 隠おだしきの海わだの畔べありき貝殻のいくつを拾い汝なが聲を聴き 塋域に彳たちたる若樹まがなしき幺あえかな光さざなみだちき 海の瓊玻にわたづみをおさめ掌へささやかな詩うた…

短歌

雑詠 へべれけを救けし夜のついにきて佐美雄の哥うたをいくたびか誦す むな底に詩女神ミューズなる器官あり黒き液汁われを懊殺す 生活はまばゆけれ予わが夢裡に入り圃場に宁たてる白鳥は去いぬ 秋の日に世界はいっそ眼となってさまざまなりしわれ瞶みつめい…

10月に読んだ本

・村岡栄一:去年の雪(YKコミックス).少年画報社,2023.・エルド吉永:龍子(トーチコミックス).リイド社,2023.・藤本和子:イリノイ遠景近景(ちくま文庫).筑摩書房,2022.・大野晋:古典文法質問箱(角川ソフィア文庫).KADOKAWA,1998.・藤…

短歌

銷閑の折、聖約翰ヨハネ騎士団を懐おもいて詠める(二首) 赭門あかもんの騎士団旧かつてかありけむ。笛の鳴ねありて月精つきは没しづきぬ 葬処はふりどを出でたる余われを成らしめよ、典薬寮ホスピタルなる黒衣の隠士 病床にて(三首) 寂莫じゃくまくは言…

短歌

暮鳥に 聖三稜玻璃に綺羅美の屈折光 冷寂の閨 虹蜺の交 清白に 秋成の沈める書ふみを引き揚げし船にぞ竚たてる柿の実腐あざる 有明に 壊くずれ来し白き月をば磐いわの上えに無絃の琴を独り爪弾く 珥みみだまの落ちる音はも途みちの端はな 玄はるか延びゆくか…

9月に読んだ本(2023年)

・水越康介:応援消費―社会を動かす力(岩波新書).岩波書店,2022.・久保(川合)南海子:「推し」の科学―プロジェクション・サイエンスとは何か(集英社新書).集英社,2022.・田中優子、小林ふみ子、帆苅基生、山口俊雄、鈴木貞美:最後の文人石川淳…

8月に読んだ本(2023年)

・野口冨士男:しあわせ かくてありけり(講談社文芸文庫).講談社,1992.・有田忠郎:有田忠郎詩集(日本現代詩文庫).土曜美術社,1992.・川西政明:小説の終焉(岩波新書).岩波書店,2004.・窪田般彌:窪田般彌詩集(現代詩文庫).思潮社,1975.…

短歌

そこばくに邈とおく彳たちたる逃げ水の似ごとく揺らめく赫のスカート 卓上に噴水のあり ささやける暮鳥の一聲 朔きたの星はも 電いなづまよ 月のかげより還りたるわれ主宰せるわれの淋しき 口馴染みする言葉なも味気なき――聴こえねえって! 百合の花咲く

咒めく夕

作 者:ヴィーチェスラフ・ネズヴァル(1900-1958) --- 咒まじめく夕ゆうべは浴ゆあみする玄くろきみづうみ界さかいと做せむは樹木の荘かざる空虗の小路恆つねに霊響たまふる曐ほしの楡龝 あきめき昏くらむ惑いの瞳睲めだま

7月に読んだ本(2023年)

・高山宏:[解説]「常数」としてのマニエリスム.In:ホッケ,グスタフ・ルネ/種村季弘、矢川澄子゠訳:迷宮としての世界―マニエリスム芸術 下(岩波文庫).岩波書店,2011.・堀田善衛、司馬遼太郎、宮崎駿:時代の風音(朝日文庫).朝日新聞出版,1997…

背日性の暮し

真昼に天降あもる最闇黒 我惟あもうとは言えずに消ゆ 束の間の羽搏き 踆烏の流景ひかりあり 爾きみの御胸に貪る最微瀾 久遠の幽壙すまいに魔業まじわざの私言ささめき ふぃん・で・しえくるの咒文かしりあり 秘蹟しるましは腐爛 蝙蝠かわほりの竪子こ訪とい…

短歌2

傍役わきやくと謂いわれし吾の物語り 見えざるものの聲収めたり l'amourラムールをlemurレムールとの錯簡あり 或いは愛を或いは霊を 鬼城の句、口くち吟ずさみつつ徒かち歩あるく。あの凍蝶いててふも翅灼かれけり 花にさえ嚙みつかれけり。奇美拉キマイラの…

短歌

都奇つきと書く 街に瑰くすしき真澄鏡まそかがみ 住み古りてなお待ち遐どおし汝きみ 星天降あもる 微冥ほのぐらき河うち照らす月魄つきしろは无なし。今し二人は さようなら 朝明あさけにくらし海族いろくづのふたり相あい離さり余香漾ただよう。 たやすくは…

6月に読んだ本(2023年)

・種村季弘:失楽園測量地図.イザラ書房,1974.・大田俊寛:現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇(ちくま新書).筑摩書房,2013.・京極 夏彦:文庫版 地獄の楽しみ方(講談社文庫).講談社,2022.・常光徹:口承文芸の研究I―学校の怪談(角川ソフィ…

短歌

おくつきへきみの眠りをおかしつつしるましを覵ゆおそろしき夕 おぞましき夢を見し夜 独りいる我、野性的な風、ノスタルジア。 抱擁交わすことだに無く、ただみつめあう小部屋を世界とぞ言う。 夏の風 わが夢魂さえ吹き散じ尚おも窓より見るありのまま 別れ…

随眠行

爾きみの悒鬱ゆううつは 阜おおきな焉 幺あえかなる光 降る夜よ 玄黒の翼を疵きずつけし 爾きみ 万象は 寂しづかに見入る 幽光の炎もえる 交差点 开そはひとの含羞の河水 果して爾きみの頰紅を溶く 夢寐に仆たおれ臥ふし 今もう 爾きみは無声の夜 無声の 経…

短歌

呼びとむる臆病者の声、幽か。あなさびしかるわれのこすキミ とめどなくわが眼に映れきみの眼よ あかるき部屋にまどろみてをり 梅雨寒にせなのまろめるつまの手のもしかありせばハンドクリーム 七変化 かがみの嘘に付き合えば襤褸を着てこそひとり片笑め こ…

読んだ本(2023年5月)

・調査研究趣味誌 深夜の調べ 第1号.同人誌,2023.・今敏:海帰線(ヤングマガジンコミックス).講談社,2018.・鏡リュウジ:タロットの秘密(講談社現代新書).講談社,2017.・網野善彦、宮田登:歴史の中で語られてこなかったこと―おんな・子供・老…

廃墟と屋台

亜熱帯の模造装置へ 破われた窓より忍び込む 腐敗した植物の残骸 遺贈した篤志家の碑銘 これら塋域えいいきは夜よごと牽ひかれ 永遠に街を廻まわり続けている 烟もやのかかった夢の中 展ひろがりを缺かく大通りを徃ゆけば 巨おおきな交差点に彳たっている 冥…

4月に読んだ本

・遠藤功:ガリガリ君の秘密―赤城乳業・躍進を支える「言える化」(日経ビジネス人文庫).日本経済新聞出版社,2019.・木村敏:異常の構造(講談社現代新書).講談社,1973.・安藤百福:私の履歴書―魔法のラーメン発明物語(日経ビジネス人文庫).日本…

自精

無何有自より精の、 有漏、有漏、有漏。 イェイツみたいな夜。 空は曇り精の、 烏有、烏有、烏有。 フロイトみたいな夜。 陽燃館は欺瞞の尖塔。 尋香城は錯認の糞壤。 紮しばられて、 生まれて来る朝。

双めきと夜窓―囲世界燈試論

汝きみが寐貌ねがおの淪しずみ徃ゆく 月なも惛くらき夜の底方そこい 爛焉らんえんたる咮くちばしに啄ついばまれ 赩あかき燄ほのおの滲むらむ 猥雑なる小部屋に胞え乱れ 慈雨降り頻しく書や書の灰や 悲あわれなる傾眠の掌てへ置かれ伏し 歍ああ…… 御盞みけに…

私達の羊へと還ろう

淋しげな為人キャラクターと彳ゆきつ亍もどりつし 私達の歩調をなも狂わせる点滅ガス・ライティング 両ふたつの窓にさえ眩惑の微瀾へと 恠誕あやめき立つ汝キミは 佯さまよえる 噫ああ 朒ししと羽搏く曐ほしの羣むれに 旋回を歇やめぬ引蛾なりし明滅よ 唯た…

掌上の湖水より

掌上の湖水より 湧きて立つ遍あらゆる懈怠たち 郷土なき返照に向け 悲あわれ昏くらく滲透していく 錆色の水滴と汝きみの开その索漠は 落魄した神秘に映る 剰え竈へ焌くべる ものの无なき 明るみの虚妄春三月

跨線橋の上で

悪無限 静寂への責務は 闇黒の おびただしい疵きずとして 尾燈テールランプの冥くらさ斗ばかりが 余わたしたちに 在り尽くせ 黒い土 夜は既もう退のいた 淋しさだけが 独りなも歩き徃ゆく 佛佛ほのぼのと見知らぬ街

雨がゆっくりと下る日

夜半よわの窓外に打鍵する 惛くらく大きな像すがたが双ふたつ 雨がゆっくりと下ふる日には 唯ただ淋しさだけが徉さまようと云うのに 街の燈の瞬き 厶わたしの苦しみ