朽葉(6首)
くれないの世界ぞ悲れ我が貌を伴れて没める街の底にも
隠しきの海の畔ありき貝殻のいくつを拾い汝が聲を聴き
塋域に彳ちたる若樹まがなしき幺かな光さざなみだちき
海の瓊玻たづみをおさめ掌へささやかな詩いよよ飛び立つ
真夜中の水のほとりに乃今は在て要らぬ月かげ要らぬ淋しさ
そこにいて跳ねてかおりし何者ぞぼくらはふたり死葉を焚けり
夕映(3首)
夕映を出でて十歳も歴ちにけり我が真宅の御舎は炎ゆ
月極の駐車場へと忍び入る夕映しるし今日皈りゆく
夕映のひととなりてし汝兄よ既う流景のうちに在て撫でゆけり