短歌

おくつきへきみの眠りをおかしつつしるましを覵ゆおそろしき夕

おぞましき夢を見し夜 独りいる我、野性的な風、ノスタルジア

抱擁交わすことだに無く、ただみつめあう小部屋を世界とぞ言う。

夏の風 わが夢魂さえ吹き散じ尚おも窓より見るありのまま

別れ路に水星の騎士顕れて窃と耳打ち くちづけしよう

突然にささめごとあり 起ち上がり窓のとを見る、細き径に背。

泣いてすがってゆるしを請う夜。彗星めいた恋人よ、さやうなら!

ささやかな破片散り敷く廃苑になが声も無き 独り玻璃踏む

だれとなく恋をしようと惟う夜 夢なき眠りを寐る梅雨冷え