短歌2

傍役わきやくと謂いわれし吾の物語り　見えざるものの聲収めたり

l'amourラムールをlemurレムールとの錯簡あり　或いは愛を或いは霊を

鬼城の句、口くち吟ずさみつつ徒かち歩あるく。あの凍蝶いててふも翅灼かれけり

花にさえ嚙みつかれけり。奇美拉キマイラの似ごとき言葉の咲き匂う季とき

一五八二年死没せし聖テレジアの像は淋しき

ファブリツィオ・クレリチの絵に描かれし環わの崩くゆる空、その空の漠あを

影があり光もありし父の背せな。ただそればかり、吾ぞ瞶みつむる。

啼叫いさちりし巨おおきなる人尤彌爾ユミルの聲　完全人の双貌かお至いと淋し