銷閑の折、聖約翰騎士団を懐いて詠める(二首)
赭門の騎士団旧てかありけむ。笛の鳴ありて月精は没きぬ
葬処を出でたる余を成らしめよ、典薬寮なる黒衣の隠士
病床にて(三首)
寂莫は言立てがたし秋の雨 冷え枯るる室 底り顕つ我
二日月fragileなるシール貼り錯時法の街へ遺贈せり
土星の環 手秉りて来よと汝の云い 桂冠詩人病み臥して居り
雑詠(五首)
花をみて花と言いなす残酷さ葩の散りぎわ秋津飛び交う
淋しさに鏡面加工施さば紅れる頰に映り入るひと
阿古屋珠頰ばりたしと地団駄を蹈みて稚ぎし日 貝と化る
寐ねがての牖外に耳こゆ病葉の下りてそそげる昳かな
ありつくし夜台より覓ぐ星羣へ伸びる手もなし朱鳥翺ぶ